慢性的な手湿疹はハンドケアの習慣を学ぶことで良い効果が得られる

慢性的な手湿疹は治りにくく、とても悩ましい疾患です。

寛解と再発を繰り返し、患者さんの心理的・身体的負担は大きく、偏頭痛などの慢性疾患と同じくらいつらいと言われています。

多くの治療法はありますが、実は治療法の有効性と安全性に関する長期データは不足しています。

基本的な治療としては外用ステロイド剤と保湿剤であり、アレルゲンや刺激物を避けることも必要です。

よい状態を維持するためには、悪化要因となることを予防することも大切です。

例えば、手洗いの回数を少なくする、手の乾燥を正しく行う、刺激物から手を守るために手袋を着用するなどが、悪化を防ぎます。

しかし、こうした対策や知識は正しく行われることが少なく、治療を長引かせることに繋がります。

そこで患者教育 (医療専門家が患者さんに対して健康に関わる情報を伝えること) を行うことで、臨床的に改善するのか、QOLは変わるのかについて調べた論文がありました。

以下、紹介します。

Positive change in hand care habits using therapeutic patient education in chronic hand eczema (Contact Dermatitis 2020 Jan;82(1):10-17.)

この論文をおおまかにまとめると…

患者教育を含めたケアプログラムに71名の慢性的な手湿疹患者が参加し、3ヶ月後にmTLSS、DLQI、WPAIを評価した。

ケアプログラムを終了した58名の患者では、手湿疹を悪化させるような行動が減り、評価項目が有意に改善した。

背景

慢性的な手湿疹は患者さんの大きな負担になっている。

手湿疹の維持療法には、悪化させる行動や、増悪因子を制限するような予防的な措置が大切であるが、実際に理解して行動している患者は少ない。

目的

患者教育を含んだケアプログラムが、患者のその後の行動、臨床的重症度、QOL、労働生産性に影響を与えるかどうかを評価した。

方法

1つの施設で前向き研究を行なった。

参加者はアトピー型手湿疹、刺激性接触皮膚炎、化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎の患者であり、外用ステロイド剤を処方され、個別のケアプログラムに参加した。

評価はケアプログラム参加前と、治療介入3ヶ月後に行われた。

評価項目は、ハンドケアに対する行動、mTLSS (modified Total Lesion Symptom Score)、DLQI (Dermatology Life Quality Index)、WPAI (Work Productivity and Activity Impairment) である。

統計方法としてPaired t-testを使った。

結果

78 名の参加者のうち、ケアプログラムを修了したのは58名であったため、58名で解析を行なった。その結果、

手湿疹に悪い行動が減少 (Negative Behaviours: P < 0.001)

臨床評価が改善 (mTLSS: P<0.0001)

労働生産性が改善 (WPAI: Presenteeism P<0.0001, Absenteeism P<0.01, Work Productivity Loss P<0.001, Activity Impairment P<0.0001)

QOLが改善 (DLQI: P<0.0001)

手洗い回数の減少、優しく手を洗う割合が増加、手洗い後に手を濡れたままにしない割合の増加、保湿剤の使用の増加などといった行動の変化も見られた。

結論

患者教育プログラムは患者のハンドケアに対する行動を変容させ、手湿疹を改善させる。

その結果、QOLや労働生産性も増加することがわかった。

ディスカッション

デンマークでは255名の手湿疹をもつ医療従事者に対して、ケアプログラムのランダム化比較試験が行われており、5ヶ月後の介入群で有意な手湿疹の改善が得られている。

オランダでも手湿疹をもつ医療従事者に対してランダム化比較試験が行われており、12ヶ月後では手湿疹の改善、保湿剤の使用頻度が高いこと、綿の手袋を使用する頻度が高いなどの効果が得られた。

今回の研究では参加人数は少ないが、医療従事者ではない手湿疹患者を組み入れており、患者教育やケアプログラムの大切さがわかった。

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