実は女性看護師の腕や足を触ってくる患者さんは少なからずいます。
病院の中では許されると思っているんでしょうか(怒)。
そういったことはすぐに報告されて、看護師長や警備の方から厳重注意が与えられているようです。
看護師長はほんとに強くて頼りになる!
私も女性医師としてセクハラをしてくる患者さんに会うことはあります。
若い時はなんとなく流したり、泣き寝入りすることもありましたが、最近はきっぱり言える強さを持つことができるようになりました。
しかし、セクハラや迷惑行為をしてくる患者さんの対応は難しいところがあります。
セクハラしてきても治療をしないと後々揉め事になるんじゃないか、とか。
患者さんが訴えていたら、応召義務もあるし対応しないといけない、とか。
このような対応は医療者でも知らないことが多いです。
そのため、以前の私のように流してしまうことが多いように思います。
そこで、適切な医療を適切に届けるため、対応の仕方についてまとめました。
医療者側の考え方を知っておくと、患者さんもよりよい医療を受けることができるでしょう。
セクハラ行為をしてくる患者さんへの対応
結論からいうと、医療者がセクハラをされたら病院の適切な部署に報告し、警察にも連絡です。
看護師は患者の処置や介助を行うため、患者さんと接触することが多くあります。
そのため女性看護師は女医よりも狙われることが多いようです。
医療者側としては、この後もいろんな仕事が山積みになっているので軽く流して次にいこうと思ってしまいます。
しかし、セクハラ行為を軽く流すことはとても良くありません。
今後も続く可能性があり、他にも被害者が増えてしまうからです。
もしセクハラ行為を受けた際は、当該医療者も含め、医療機関を挙げてはっきりと「NO」と言うべきです。
セクハラを受けた医療者は働くことが嫌になってしまうこともあるので、医療機関が組織として患者さんからのセクハラをなくすように努めなければいけません。
そもそも同意なく身体を触ることは痴漢行為として、迷惑防止条例違反になります。
病院の中であろうと、女性 (男性であっても) に触る行為は罪に問われて逮捕されるほどのことです。
問題を起こした患者さんの対応次第では、通院をお断りしましょう。
また入院中であれば退院していただくことになります。
応召義務があると主張する患者さんへの対応
多くの医師は応召義務があるため、診療を断ってはいけない、必ず患者さんを診なければいけないと大学時代から教え込まれます。
医師法19条1項に定められているこの応召義務は、
診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。
医師法第19条1項 (昭和23年法律第201号)
とされており、
何が「正当な事由」であるかは、それぞれの具体的な場合において社会通念上健全と認められる道徳的な判断によるべきものと解される。
昭和24年9月10日付医発第752号厚生省医務局長通知
例えば、治療費が払えない方でも医師は診療を拒むことはできません。
緊急の治療を要する患者がいた場合は診療の求めに応じなければならない、とも通知されています。
そこで、私たちが教え込まれていた「正当な事由」とは、
医師の不在または病気等により事実上診療が不可能な場合に限られる、と昭和30年厚生省から回答がきています。
ここまでが多くの医師が知っている応召義務なので、基本的にすべての患者さんに対して診療を拒むことはできないと思われていました。
そして患者さん方も、応召義務があるため医師が診療を拒むことができないということを知っているでしょう。
しかし、2019年12月25日に厚労省から新しい通知がありました。
その中でも大事だと思うものを以下に示します。
労使協定・労働契約の範囲を超えた診療指示等を受けた場合に、結果として労働基準法等に違反することとなることを理由に診療を拒否しても応召義務違反にはあたらない。
患者と医療機関・医師・歯科医師の信頼関係も応召義務で重要な考慮要素である。
つまり、過重労働がある場合や、患者さんとの信頼関係が築けない場合は応召義務違反にはならないとされました。
その通知には事例を挙げており、クレームを繰り返し続ける患者さん、悪意をもって医療費不払いをしている患者さんに対しては、診療しないことが正当化されるとしています。
これまで際限なく診療を続けなければならず、どんな患者さんでも診療しなければならないとされてきたため、この通知は我々医療者にとっては、今後の働き方を改革できる重要な通知となりました。
しかし、1回の迷惑行為があったからといってすぐに診療拒否できるかというと、それは難しいところです。
迷惑行為に対しては毅然とした態度で対応し、注意や警告などをしても迷惑行為が繰り返されるときに、診療拒否ができるというのが現状の考えです。
最近はすぐに警備員さんも駆けつけてくれるようになって、安心して働ける職場が多いです。
少しずつ医療者に対して、国が健全な働き方を考えてくれるようになってきました。
こうして、もっと医療業界が良くなってくれるといいなと思っています。
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