差額ベッド代をいただいています

ありがたいことに、うちの病院は入院患者さんでいっぱいです。

大部屋はほぼいつも満員で、すぐに入院を受け入れるのはなかなか難しい状況です。

多くの病院がこういったことを経験しているのではないでしょうか。

そのため、緊急入院が必要になったときに個室に入院してもらうことがあります。

その際、個室にかかる部屋代、いわゆる差額ベッド代を実はいただいています。

もちろん患者さんに状況を説明し同意を得ることは当然なのですが、ふとこんなことを思い出しました。

こういう場合は払わなくてもよかったような…

インターネットで調べるとたくさん出てくる差額ベッドの話題。

そういえば、こんな状況でなんで差額ベッド代がもらえるんだっけ。

いつもいただいてるけど、違法じゃないよね…

ということで、調べてみました。

結論として、厚労省からの2つの通知が差額ベッド代をもらえるかどうかの大切なポイントになっていました。

差額ベッド代という方が馴染みがあると思いますが、適切には “特別療養環境室に係る費用” という難しい表現をされます。

これは、患者さんのより快適な入院生活を送れるように用意された病床にかかる費用のことです。

費用を払うことで、1人部屋であったり、シャワールームがあったりと、快適に過ごせるようになっています。

それでは、個室であっても差額ベッド代がかからないケースについて調べてみましょう。

実は、厚労省から通知があり、以下のケースでは差額ベッド代を求めてはならないとしています。

(1) 同意書による同意の確認を行なっていない場合

患者さんが同意書にサインをしていない、あるいはサインをしたとしても同意書の説明が不十分な場合は、病院は差額ベッド代を請求できません。

(2) 患者本人の「治療状の必要」により個室などへ入院させる場合

例:救急患者や術後患者などで病状が重篤なために安静を必要する場合、常時適切な看護や介助が必要になるため、個室に移動することが多いです。

(3) 病棟管理の必要性などから個室に入院させた場合であって、実質的に患者の選択によらない場合

例:なんらかの感染症にかかっている場合、他の入院患者に感染することを防止するために、患者の選択によらずに個室に移動させるときも差額ベッド代はかかりません。

例:個室以外の病室が満床であるために、個室に入院せざるを得ない場合も差額ベッド代はかかりません。

とまあ、例にも書いてあるように、大部屋が満床の場合で、患者の希望によらずに個室に入院する場合は差額ベッド代がかからないと明記されているんですね。

よもぎ

そうなんだ、今まで差額ベッド代をもらっていたけど良くなかったのかな…

と思ったのですが、こんな通知も厚労省からありました。

特別療養環境室以外の病室の病床が満床の場合における特別の料金を徴収の取扱いについては、特別療養環境室の設備構造、料金等について、明確かつ懇切丁寧に説明し、その上で、患者が特別療養環境室への入院に同意していることが確認される場合には、特別療養環境室以外の病室が満床であっても、特別の料金を徴収することは差し支えない。

平成30年3月5日 厚労省通知

難しいことが書かれていますが、要するに、

丁寧に説明して、患者さんの同意があれば、大部屋が満床であっても差額ベッド代はもらってもよい。

ということです。

よもぎ

おお、だからいつも差額ベッド代をもらえていたんですね!

患者さんの心理から言えば、入院前にゴタゴタがあると良くないから言われるがままにしよう。

と思って同意書にサインしてくれているかもしれません。

同意書に署名しないと入院を拒否される、ということはありませんが、他の病院に行っていただくことはあるかもしれません。

医療者側から言えば、差額ベッド代をもらっても給料は上がらないので、どっちでもいいんですけどね。

経営の面で、回り回って医療従事者の給料に反映されるかもしれませんが。。

ただ確実に言っておきたいのは、無知な患者さんから個室代をもらっておこうという意図は全くありません。

なぜ、差額ベッド代をもらうかというと、個人的な意見では他の患者さんとの不公平感があるからかなと思っています。

また、設備の維持のための費用もかかるということも挙げられます。

先ほどにも書きましたが、大学病院のような大きい病院の場合、患者さん側が差額ベッド代は払いたくないとすると、

病状次第ですが、患者さんの希望する大部屋を確保できる病院に行っていただくことがあります。

大病院の場合、重症の患者さんが入院されることが多く、医療資源も限られています。

そのため、重症でない患者さんは連携している他の病院に行っていただくことになっています。

他の病院に行っていただく時は、大病院でなくても治療できると判断できる場合ですので、差額ベッド代もかからずwin-winではないでしょうか。

と、難しい内容でトラブルも多いのですが、定まった決まりがないからなんですよね。

病院で適宜判断してください、みたいな文言もありますし。

医療者側としては、患者さんにできるだけ不利益がないように心がけているだけですが、なかなか理解されないことも多い…

病院の紹介状を頼みづらい、頼んでも書いてくれない医師の対処法も、病院の現状を知るのにいいと思います。

それではまた!

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