治りにくい手湿疹について皮膚科医が丁寧に説明します

治りにくい手の湿疹で困っている方はかなり多いです。

皮膚科に受診しても、何を塗っても改善しない方もいらっしゃいます。

ここでは、手湿疹に悩む多くの方に少しでも役立つ情報をまとめます。

この記事は手湿疹診療ガイドラインと、若干の私の経験に基づいています。

よもぎ

さかむけ (ささくれ) も手湿疹の1つですよ。
親不孝だからではありません。

多くの手湿疹に悩む患者さんは、こう聞かれます。

「私は何かのアレルギーなのでしょうか」

「食べ物が悪いんでしょうか」

確かに何らかのアレルギーがあって、手湿疹が悪くなることはあります。

例えば金属アレルギーであったり、ゴムのアレルギーであったり。

金属アレルギーがある方で、微量金属が多く含まれるチョコやアーモンドをたくさん食べていると、湿疹が治りづらいこともあります。

しかし、多くの手湿疹は単純な刺激によるものです。

専門的な言葉でいうと、刺激性接触皮膚炎といいます。

この刺激性接触皮膚炎での手湿疹が、約7割を占めるといわれています。

刺激性接触皮膚炎は、物理的な刺激、化学的な刺激で直接皮膚を傷害して生じる皮膚炎です。

そのため、どのような方でも湿疹になる可能性があります。

ありがたいことに私は湿疹を起こしにくい方ですが、最近は消毒を多く行うために手湿疹ができてしまってます。

これが刺激性接触皮膚炎の典型例です。

美容院で働く方、事務で紙をよく触る方、水仕事をよく行う方、建材をよく触る方などは、常に何らかの刺激が手に負担をかけています。

ついには、なかなか治らない手湿疹になってしまいます。

手湿疹はその発症メカニズムから、おもにに4つのパターンに分類されます。

刺激性接触皮膚炎

先ほども説明しましたが、最も多い手湿疹のパターンです。

一般的には利き手側の指先や手のひら、爪周りに湿疹がでてくることが多いです。

長期間刺激がある場合だけでなく、短期間であっても強い刺激があった場合には湿疹になってしまいます。

ずっと湿疹を繰り返していると、手の角質が増殖し、亀裂になってしまうこともあります。

化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎

化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎は、刺激性接触皮膚炎に比べて痒みや湿疹の症状が強いことが多いと言われています。

アレルギー物質が触れたところから症状がでてくるため、指先や親指の付け根などに皮疹がでてくることが多いです。

また、手だけでなくアレルギー物質と触れた手首や腕にも皮疹がみられることがあります。

薬品に触れる機会の多い美容師さん、理容師さん、調理師さんなどがこの湿疹になることが多いようです。

ゴム製品、洗剤、洗髪剤、金属などが原因となります。

タンパク質抗原に対する接触皮膚炎 (タンパク質接触皮膚炎)

アレルギー物質に対する即時型アレルギーを主なメカニズムとした手湿疹です。

先程の化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎とはメカニズムが異なります。

アレルギー物質に触れた部位に、じんましんの様な皮疹と痒みが出てくることが特徴です。

乳製品、魚、肉、野菜、果物などの食品や動物、花粉も原因になります。

アトピー型手湿疹

アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚バリア機能が低下しやすい素因があるたえめ、刺激性の手湿疹を起こしやすい傾向にあります。

花粉やカビなど既にアレルギーがある方は、そのアレルギー反応でアトピー性皮膚炎が悪化するとともに手湿疹も悪くなることがあります。

しかし、確実に治す方法があります。

それは、

何も触らないことです。

水仕事をしない、紙を触らない、キーボードを触らない。

でも、そんなことできる方は少ないと思います。

そこで、皮膚科ができることは手湿疹の原因を明らかにすること。

そして、少しでも皮膚の状態を良くするお手伝いです。

適切な強さのステロイド外用剤を使ったり、ワセリンなどを用いて皮膚を保護することで、皮膚の状態が良くなります。

手を洗ったらすぐにクリームを塗る、手にワセリンを塗って手袋をする、かゆいときは冷やして何とかかかないようにするということも大切なことです。

ドラッグストアで買えるステロイド外用剤であれば、フルコートfやリンデロンをおすすめします。

皮膚科でよく使う手袋としてはチュビファーストがあります。

洗って使えるので、ワセリンを使った後にチュビファーストを装着すると良いかと思います。

大人用、子供用がありますので、手の大きさに合わせてご利用ください。

ただ、絹の手袋や綿の手袋なども全然構いません。

絹の手袋だと肌触りがよくて個人的には好きですが、タクシーの運転手さんが使っているような綿の手袋も充分に使えます。

こうした工夫をすることで、皮膚の状態が回復し、手湿疹が改善しやすくなります。

手湿疹の原因を明らかにする際には、詳細な問診により趣味や生活習慣などを聞くことが大切です。

そして、パッチテストやプリックテストという方法で原因となる物質を特定していきます。

どちらも少し時間がかかるテスト方法のため、クリニックではやっていないところが多いと思います。

最後に一言付け加えるとしたら、皮膚科の薬は完璧ではありません。

日常的に手に負担がかかっている方は治りづらいため、ある程度の折り合いをつけていくことが現実的な目標になります。

より専門的な治療としては、紫外線療法であったり、全身的な治療(ステロイド内服、シクロスポリン内服)をすることもあります。

もっと改善を望む場合は、どんなパターンの手湿疹であってもやはり刺激になる物を触る回数を減らす以外にありません。

以上になります。

少しでも参考になったら嬉しいです。

参考文献

手湿疹診療ガイドライン 日皮会誌:128(3),367-386,2018(平成 30)

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