顔面のほてりや赤みを繰り返してしまう酒皶(しゅさ)。
鼻や頬を中心に毛細血管が拡張してしまい、顔の赤みが持続します。
多くは女性に発症し、治りづらいため困っている方もいるのではないでしょうか。
ここでは酒皶について説明していきたいと思います。
酒皶の診断
酒皶には病期があり、第Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度があります。
特殊な型として眼型というのもあります。
第Ⅰ度(紅斑毛細血管拡張型):鼻、頬、額を中心に赤みが持続します。毛細血管の拡張や、顔の脂分が多くなり光沢のある顔になります。
第Ⅱ度(丘疹膿疱型):第Ⅰ度の症状に加え、ニキビに似たぶつぶつや、膿をもったぶつぶつがでてきます。顔の脂分もさらに強くなります。
第Ⅲ度(腫瘤型):鼻が大きく塊のようになります。ブラックジャックに出てくる本間丈太郎はまさに鼻の酒皶になっています。お茶の水博士もそうかもしれません。この鼻だけ症状が出る方もいるので、第Ⅱ度から進行してなるわけではなさそうです。
眼型:酒皶に角膜炎、結膜炎、虹彩炎などの眼の合併症を伴う型です。眼だけに症状が出る方もいるので、こちらも特殊な型といえます。
どの病期にもいえるのですが酒皶の特徴として、毛細血管の拡張があります。
ダーマスコピーで確認すると多角形の血管像 (polygonal vessels) が特徴的です。
また拡張した脂腺も特徴です。
顔のほてりを自覚することも特徴なのですが、冬に悪化することもわかっています。
冬は乾燥があったり、寒暖差が大きいからと考えられます。
鑑別に挙がる疾患としては、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、凍瘡、酒皶様皮膚炎、顔面播種状粟粒性狼瘡 (LMDF) 、好酸球性膿疱性毛包炎 (EPF) などが考えられます。
ほてりを起こす疾患も鑑別にあがります:内分泌異常、甲状腺機能亢進症、副腎機能亢進症、更年期障害、カルチノイド症候群などです。
酒皶の増悪因子
酒皶の原因はいまだに明らかにされていませんが、紫外線、アルコール、種々の刺激物、毛包虫感染(ニキビダニ)などが増悪因子とされています。
若い時からあまり日焼け止めを塗らなかった、化粧をせずに過ごしていたという方や、スパイシーなものをよく食べる、お酒をよく飲むという方が多い印象です。
基本的には血流を増加させるような行動が悪化させる要因と考えられます。
このような悪化因子が続くと顔にかゆみ、ほてり、化粧品がぴりぴりする、赤ら顔という状態になることがあります。
これがすでに第Ⅰ度の酒皶になっています。
ここで顔面の赤みに外用ステロイドやタクロリムス製剤を塗ると、一時的に良くなります。
これが落とし穴で、さらに塗り続けると悪化していきます。
こうしてニキビのようなぶつぶつが出てきたり、膿がでてくる第Ⅱ型に進行してしまう可能性があります。
ここまでくるとなかなか改善しにくく、どんどん赤みやぶつぶつが広がっていく状態になってしまいます。
酒皶の治療
酒皶の治療では、症状に合わせて治療を行うことになります。
紅斑 flushing
生理的な血管拡張・収縮が原因になってきます。
炎症反応が治まれば、自然と改善してくることもあるため、経過をみていくことも必要です。
改善が乏しい場合は血管収縮剤を使用することになりますが、日本ではどれも適応外です。
毛細血管拡張
血管拡張が固定されてくるので、自然にはなかなか改善しづらなくなってきます。
炎症反応が治まってくれば、徐々に改善も期待できます。
パルス色素レーザー (595nm)、Nd:YAGレーザー (1064nm) などの効果が報告されています。
丘疹・膿疱
丘疹・膿疱になってくると、メトロニダゾールの外用剤が有効な薬の1つです。
これまでは病院で作成していたため、作成できないところでは処方ができませんでした。
そのため、処方できないというのが酒皶を治療しにくくしている要因の一つでした。
しかし、2022年5月よりロゼックスゲル (メトロニダゾールの外用剤) が酒皶への適応が追加となり、今では多くの病院で酒皶の治療に使われています。
イオウカンフルローション、アゼライン酸外用薬も使うことがあります。
さらに、テトラサイクリン系の抗生剤を使うことで炎症を抑えることができます。
腫瘤
鼻に腫瘤ができる鼻瘤では、外科的な治療が必要になってきます。
アブレージョンで腫瘤部分を削っていくことになります。
眼症状
眼型では眼に炎症反応が起こります。
そのため、ステロイド点眼薬や抗生剤点眼薬などを併用して治療していくことになります。
酒皶は、何か1つ原因があって発症するわけではありません。
そのため、この薬を使えばすぐに治るということではありません。
強いステロイド外用剤が悪化させる因子ではあるのですが、他の悪化因子を1つずつ取り除いていくことで、少しずつ改善していきます。
また、酒皶の皮膚は敏感になっているのでスキンケアが大切です。
白人の方はアジア人よりも酒皶になりやすいため、海外には酒皶用のスキンケア製品が多くあるのですが、日本では入手しづらい現状があります。
日本で手に入る敏感肌用の化粧水や、化粧品を使いスキンケアをしていくとよいでしょう。
改善したと思ってもまたぶり返してしまうことも多く、治療が長引くことがあります。
信頼できる医師とともに少しずつ治していきましょう。
参考
尋常性痤瘡治療ガイドライン 2017年
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