今回は、皮脂欠乏症についてのまとめになります。
乾燥してくる季節になると、かゆみを感じる方が多いのではないでしょうか。
今回は、そのかゆみの原因となる皮脂欠乏症について、解説していきたいと思います。
皮脂欠乏症とは
「皮脂欠乏症」とは皮膚の水分保持が充分でないときに起こります。
つまり、天然保湿因子、皮脂、汗の低下などが原因となります。
では、どうして天然保湿因子や皮脂などが低下するのか。
その要因は3つに分けられ、「生理的要因」、「環境要因」、「非生理的要因」が挙げられます。
- 生理的要因
主な生理的要因として、加齢による皮脂腺や汗腺などの皮膚機能の低下、小児では皮膚生理機能が未成熟なことも挙げられます。
多くは軽度の乾燥だけになるので、医療用保湿剤による治療は必要ないことも多いです。
ドラッグストアで購入できる保湿剤でも対応できることもあります。
ただ、かゆみが強い場合はセルフメディケーションだけでは対応できないので、皮膚科受診をおすすめします。
- 環境要因
外気や室内空調によって湿度が少ない環境、紫外線暴露、過度の入浴、ボディソープを使った強い擦り洗いなどが挙げられます。
これらの環境要因がなくなれば改善することが多いのですが、改善しない場合は他の要因も考えられますので、皮膚科にご相談ください。
- 非生理的要因
これは、皮膚疾患に伴うもの (アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬など)、全身性疾患に伴うもの (糖尿病、慢性腎臓病など)、医原性 (抗がん剤、放射線治療など) が挙げられます。
以前、ずっと乾燥肌で受診されていた方がいたのですが、よくよく調べてみると甲状腺機能低下が原因であったこともあり、実は何らかの病気が隠れていることがあります。
原因のよくわからない乾燥については、病院で原因を調べてみてもいいかもしれません。
治療方法について
皮脂欠乏症の治療には、一般的に保湿剤が用いられます。
保湿剤には、モイスチャライザーとエモリエントに分類されます。
モイスチャライザーは、直接的に皮膚の水分量を増加させる役割があります。
皮膚科医院によく置いてあるモイスチャライザーとして、キュレルやNOVなどがあります。
キュレルシリーズは保湿剤はもちろん、日焼け止めやベースメイクも提供しています。
特徴としては、皮膚の必須成分であるセラミドに着目し、肌のバリア機能を助けて潤い与える点です。
キュレルの販売元である花王が開発したセラミド機能成分が、乾燥からくる敏感肌を守ってくれます。
乳幼児にも使えるため、うちの子供にも使っています。
NOVは洗顔料、化粧水、メイク落とし、ヘアケアなど多くの製品を提供しており、敏感肌やにきび肌を考慮して作られています。
スタンダードなシリーズとして、全身用保湿クリームであるスキンクリームDがあります。
モイスチャライザーであるヒアルロン酸やアミノ酸が含まれており、さらにはエモリエント成分であるワセリンやスクワランも配合されております。
また、最近では医療用成分であったヘパリン類似物質が含まれたモイスチャライザーも、一般的に買うことができるようになりました。
医療用のヒルドイドという保湿剤が有名でしたが、こうしてドラッグストアでも同じ成分の保湿剤を買うことができるのは、消費者にとってはありがたいことです。
先ほどにも出ましたが、エモリエントは皮膚を被覆することにより水分の蒸散を防ぎ、間接的に皮膚の水分量を増加させる役割があります。
代表的なエモリエントはワセリンです。
ワセリン自体は非常に安価に買うことができます。
サンホワイトというワセリンをより精製したものもあります。
これら2つを上手に使っていくことにより、保湿効果を高めていきます。
日常生活で気をつけること
保湿剤をただ塗るだけでは、それ以上の効果は得られません。
入浴後は特に水分が蒸散しやすいため、保湿剤を塗るタイミングとして重要です。
ボディソープやシャンプーのすすぎ残し、過度の使用は肌を乾燥させる一因となります。
ナイロンタオルで強く洗うことも推奨されません。
ボディソープはよく泡立ててから、手のひらで優しく洗うようにすると良いでしょう。
室内環境では、長時間の暖房は湿度を低下させる要因となり、適宜加湿器を使うということも皮膚の乾燥対策に効果的です。
また、長期間の日光暴露によっても皮膚から水分蒸散量が増加するということもあるため、紫外線の強い時期には、日焼け止めや帽子などの紫外線対策も重要となります。
最後に
皮脂欠乏症と言っても、その起こる原因はさまざまです。
もちろん冬の乾燥する時期では皮脂欠乏症が増えることは確かなのですが、乾燥していない時期でも皮脂欠乏症であることは、何らかの原因があるかもしれません。
また、かゆみが起こる原因も皮脂欠乏症だけではない可能性があります。
ずっと続く治りづらい皮脂欠乏症、かゆみなどありましたら、皮膚科受診をお願いします。
参考文献:日皮会誌 129 (13), 2763-2770, 2019
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